出典:IBCパブリッシング㈱出版の “Lost in Tokyo”
ネイティブならではの英語表現の学習のために自己流で日本語訳したもので商用目的はありません。
*ハイライトした部分を英語ではどのように表現することができるのか、考えながら読んでみて下さい。
Ⅰ
P.9-P.11
ウィリーは、慎重に1金髪の頭をその紙の上に傾けてそれを読んだ。
ウィリーに対しては何も保証しないその紙に署名するか、収入の90%を失うかのどちらか…。つまり、これがこの男の言っていることのようだった2。
理不尽なとんでもない3提案だ。事実上は一種の脅迫だった。
「あなたは三ツ星やその他の会社のことを知っているというが、それが事実だと私が知る由もないでしょう?4」
「良い質問です。そうですね…。君の収入はそれぞれ月20万、15万、10万円。窓口担当者の名前は、村田、笠原、川村。他に知りたいことはありますか?5」
ウィリーは田中を睨みつけた6。
「あなたは何者だ?」ウィリーは無作法に尋ねた。「どやってその情報を?」
「いずれわかります7。その紙に署名した後に。ご安心ください8、この件は、なにも極悪非道9なものではありません。」
極悪非道かそうではなかろうが気に入らなかった。しかし、ウィリーは、もう一度その紙に目を走らせた…。
確かにその通りだった。それは、情報を漏らさないことだけを誓約させるものだった。それ以上のことは何もない。なので、署名して、この男がしなければならなかった話を聞いて、そして丁重にお断り10すればいい。それから、自分の安全なアパートに戻って、田中のような人物とは距離を置き、この件に関する全ての人々から離れ、パソコンと辞書で言葉を調べ11、コロケーション(語と語のつながり、相性)をグーグル検索し、語源12を確認し、Wiki13をネットサーフィンし、自分の翻訳をいじくりまわすのだ。煩わされることも、気を散らされることもない。
ウィリーは、ついに折れて14署名した。
(俺は、秘密保持に対してのみ責任をもつ持つんだ。それ以上のものは何もない。はっきりさせてしまおう15。)と自分に言いながら。
田中はその紙を受け取り、きちんと折り畳んで彼のアタッシュケースに滑り込ませた。田中は、ほのかに満足しているように見えた。ウィリーは面白くなかった。16
「状況はこうです。」田中は始めた。「私は、斎藤建設を代表して来ました。君も名前ぐらいは知っているかもしれません。」
ウィリーは知っていた。日本で最も大きい建設会社だった。
「実は、17 斎藤建設の多くの子会社の中に、コスモスという小さな出版社があります。斎藤建設のCEO兼オーナーである人物には、この子会社で編集者として働く娘がいます。少なくとも少し前まではそこで働いていました。彼女は消えてしまいました。」
「消えた⁈」
続く
- cautiously: (副)用心[注意]深く、慎重に ↩︎
- ” That’s what the man seemed to be saying ” ↩︎
- outrageous: (形)無法な、けしからぬ、ひどすぎる、法外な、非道な、極悪な、とっぴな、風変わりな ↩︎
- ” How do I know that’s true? ” (直訳)私は、それを事実だと、どうやって知ることができますか? ↩︎
- ” Is there anything else you wish to know? ” ↩︎
- glared at: ~をにらみ付ける ↩︎
- “You will learn all that in good time“
↳all in good time: 時が来れば、そのうちに、いずれ ↩︎ - rest assured ↩︎
- nefarious: (形)極悪な、非道な、不正な、悪辣な ↩︎
- respectfully decline ↩︎
- look up: (言葉などを)調べる ↩︎
- etymology ↩︎
- wiki: ウィキとは、不特定多数のユーザーが共同してウェブブラウザから直接コンテンツを編集するシステム、またはそれを採用したウェブサイトのこと ↩︎
- relent:(動)くじける、折れる
〔気持ちや決意などが〕和らぐ、優しくなる、折れる
・My wife nudged me until I relented and bought her a new coat. : 私が折れて新しいコートを買ってやるまで妻はうるさくせがんだ。
〔厳しさや激しさが〕弱まる、静まる、治まる
・My headache relented at last. : 頭痛がとうとう治まった。 ↩︎ - ” Let that be clear ” ↩︎
- ” He looked faintly pleased, Willie glum.”
↳faintly:(副)ほのかに、かすかに
↳glum:(形)浮かぬ顔の、むっつりした、落胆した、陰気な、不機嫌な ↩︎ - as it happens: 実は、たまたま、折よく、あいにく
↳現在時制のas it happensは話し言葉で用いられる。文脈によっては「相手への反発の気持ち」が表される場合も。
“John told me a lie. He’s a bad guy.” “As it happens, he is my best friend.”
「ジョンは俺にうそをついた。嫌な奴だ」「実を言うと、ジョンは俺の親友なんだ」 ↩︎